Theme.
空間をどう分ける?
今回の物件は山間に佇むリゾートをテーマとして、「都会の暮らしの中で自然的な癒しを感じられる邸宅」を目指し、ホテルライクでラグジュアリーでありながらも居心地の良さを感じられるようにまとめあげました。パブリックスペースとプライベートスペースの空間の仕切り方や収納の取り方を意識し、いかに生活感を出さずに家族みんなが使いやすく暮らせる間取り構成にするかを配慮して企画しました。
プランニング
第一種低層住居専用地域ではありますが、高さ方向にもボリュームを持たせるために建物を少し沈めて高さを確保するなど建築的な手法で敷地を最大限に活用しながらフルボリュームで計画をしています。
角地で二方向の道路に接していますが広さのある6mの道路側を活かした計画で進めていきました。また、6m道路の向かいはマンションのアプローチ空間で抜けていることもあったので、自然光を存分に取り入れた計画になったらいいなとも思っていました。
外構
当現場は閑静な住宅街の入口に位置しつつも駅近で交通量も多いので、プライバシーに配慮したいと感じていて、なるべく玄関を奥まらせつつ明るい玄関空間を演出できればとぼんやり考えていました。玄関前は車を2台所有している方のためにコンパクトカーを駐車できるスペースを確保し、アプローチも兼ねて計画しています。横幅が十分あるため、車と一緒に自転車などを置くことも可能です。
閉塞感を出さないように仕切るため、有孔レンガとグレーガラスの門扉を採用。壁や床などが暗めの配色なので、門扉は初使用のシルバーで明るめの色に。
大きな車を格納できるメイン車庫は別途あり、そちらは大切なお車を駐車しておくのにも十分な広さを確保したガレージシャッター付きの車庫になっています。計画当初は普通車2台という案もあったのですが、アプローチが道路に近くなったりPHFに上がる階段で2基必要になったりなど空間的な魅力も生まれなかったため、現案押しで臨みました。
色味をマッチさせた鉄平石のピンコロとメイン車庫の扉
玄関前の車庫の壁には、誘導灯としてライン照明を取り入れました。ダウンライトが点いていなくてもほんのり照らされるので安全性が確保できるのと、意匠も意識して企画しました。この照明が1つ加わるだけで、帰宅した時の安心感がより増すかと思います。
門扉を開けた先のポーチにはベンチを設置。家族でお出かけする際の準備待ちの時間や一時的に荷物を置いたり、靴ひもを結ぶときや井戸端会議などちょっとした時間にふと腰を下ろせるようにと思い企画しました。ポーチ先にクローズ外構で植栽を植えたかったというのもあり、花壇を兼用したベンチになっています。ベンチ下の間接照明も初の試みです。
玄関
床にはエレガントかつユニークな大理石調のタイルを使用。べージュベースなのでウォールナットとの相性が良く、今回のような広がりのあるホール空間に最適だと思い採用してみました。初使用のこのタイルは使える空間が限られるので、他の物件ではもう出てこないかもしれません(笑)
「ダイナワン THE ROOM/SAN PEDRO」
階段は道路側に配置していますが、道路側からの自然光を確保するためにスケルトン階段にしました。このスケルトン階段もかなりこだわり、いかに軽やかで重厚感がある作りにできるかを吟味しました。一段一段壁の内側で支えることで、ささらを使わずに仕上げることができました。
ささらがないことですっきりと軽やかに見えますが、準耐火の性能を確保するために段板は60㎜(通常は30㎜)です。逆に段板の厚みにより軽やかさの中にも重厚感を演出できているかと思います。
階段下は土間と同じタイルを使用しているため、観葉植物やペットのスペースにしたり、冬にはクリスマスツリーを置いたりしてみてはいかがでしょうか。
前室
通常、アイネストの物件は玄関ホールと廊下を仕切る扉を設けることが多いですが、今回の物件は玄関ホールの空間をダイナミックに見せるためにそれを設けていません。ただし1階に主寝室を配置しているため、パブリックとプライベートな空間が直通ではなく一拍とれるよう”セミプライベート空間”として前室を配置しました。
この前室は主寝室・ウォークインクローゼット・お手洗い・シャワールームに繋がっていて、こちらの床にも玄関ホールのタイルを連続して貼り、ホテルライクな空間に仕上がったと思います。空間が広いのでウォーターサーバーや小さい冷蔵庫などを置いてもいいですね。朝シャワーを浴びたいときやお風呂場が混雑しているときは、このシャワールームで十分だと思いますよ。また、シャワールームからクローゼットにすぐ行けるので、寝室で寝ている人の邪魔をせずに用意ができるのもポイントです。
主寝室はキングサイズのベッドも余裕で置ける広さ(9.5畳)。ベッドから見える外の景色は、緑も相まってとても素敵に仕上がりました。
ガラスなので携帯を置くことも可能
ベッドの近くにスイッチを設置
窓先に見える緑
分断LDK・水廻り
今回の物件はリビングとダイニングが分断されていますが、角地なのでどちらも自然光が入り明るくなりました。
空間を仕切る2枚引戸にはグレーガラスの扉を使用。お客様が来ていてリビングまたはダイニングだけ扉を閉めておきたいときなどシーンに合わせてフレキシブルに利用可能です。LDKは一体の方が好まれる傾向がありますが、今回は2枚引戸を開け放せるという点で分断でありながら空間の一体感や開放感・広さを感じられる新しい形のLDKスタイルが生まれたと思います。
1階にもトイレとシャワールームを作りましたが、メインの水回りは家族全員が使いやすいように2階に持ってきました。洗面所・脱衣所・キッチンの家事動線を意識した構造になっています。洗面所はトイレへのアクセスも兼ねているため中央のホールから直接出入りできるように計画し、家事をする方・家族・お客様、どのタイミングでも全員が使いやすいように配置しました。
また、一般的に洗面台は外壁側に置くことが多いですが、今回は物件にゆとりがあるため室内側に配置することで窓からの自然光を確保し、さらに出窓にすることで視覚的な広さも確保できました。
外構のアプローチが完成し、夜に点灯した際には感動しました。初使用の誘導灯も良かったのですが、門扉を開けた時の雰囲気がとても好きで。ベンチを外構で作成するのが初めてで考えた通りに出来上がるか正直とても不安でしたが、部署の方や職人さんのお知恵を借りながら完成度の高いものに仕上がったと感じています。また、1階のホールから前室・主寝室の空間構成はホテルライクなコンセプトとマッチできたなと思います。2階についても水廻り空間の明るさと広さ、家事導線など盛り込みましたし、この物件にないものはないというほど要素を詰め込みました(笑)2階のリビングとダイニングの家具は、蔦屋家電エンタープライズ様にトータルコーディネートしていただきました。よりライフスタイルのイメージがしやすい空間になり、とても満足しています。